東京地方裁判所 昭和43年(モ)15909号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔判決理由〕……をあわせれば、債務者の主張(一)、(二)の事実((一)債務者は、債務者を原告とし、申請外栗原新一郎と債務者を被告とする東京地方裁判所昭和四二年(ワ)第八七九四号土地所有権移転許可申請手続等請求事件についてなされた左記主文の確定判決(昭和四二年一二月七日口頭弁論終結、同年一二月二一日言渡)を得ている。1被告栗原新一郎は別紙物件目録記載の土地(本件土地)について、東京都知事に対し、右土地の原告に対する売買に関し、農地法第五条に基づく所有権移転許可申請手続をせよ。2右許可申請について東京都知事の許可があつたときは、同被告は原告に対し、右土地につき東京法務局世田谷出張所昭和三四年二月二四日受付第四一五一号所有権移転請求権保全の仮登記の本登記手続をせよ。3被告浅川喜栄は前項の本登記手続につき承諾せよ。(二)そして、債務者は、右確定判決に基づき、昭和四三年四月三〇日付で農地法第五条に基づく所有権移転許可申請手続をし、同年六月二二日付で東京都知事の許可を得た。)を認めることができ、さらに、債務者主張の確定判決の結論である主文を導き出した判断には、右判決の基礎となつた訴訟の口頭弁論終結時現在少なくとも債務者のための本件所有権に関する仮登記が債権者主張の所有権取得登記に優先する順位のものであること、右仮登記上の権利が存在していること、したがつて債権者の所有権取得登記に表象される権利は、右仮登記上の権利を負担するものであることの判断が含まれていることが推認できる。
そうであるとすれば、いまさら、債権者が右判決の基礎となつた口頭弁論終結時前の事実をもち出して、右仮登記上の権利が消滅している旨主張することを許容することは、右判決中の判断内容を無視することになるといわざるをえない。もつとも、形式的にみれば、右判決の前記判断は、債権者に対し、債務者が本登記申請をするにつき承諾すべきことを命じた右判決の先決問題に過ぎないから、判決の既判力は法律に明文の規定のある相殺の抗弁についてのほかは、訴訟物についてのみ生ずるという立場を形式的に貫く限り、前記の判断については既判力が生じないといわざるをえないであろう。しかしながら登記は権利の表象に過ぎないから、本登記申請についての承諾請求(抹消登記手続請求の変形とみるべきであろう)をめぐる紛争は実質上は実体関係の紛争とみるべきであり、本登記申請についての承諾請求権が存在することの判断と債権者の所有権取得登記により表象される権利は債務者の仮登記上の権利を負担しているという判断を既判力の面で切断することは、相当でなく、右のような債権者の所有権取得登記により表象される権利は、債務者の仮登記上の権利を負担しているという判断についても既判力があるとみるべく、右判断の基準時前の事実を主張して右仮登記の抹消を求めることはできないと解すべきである。(小笠原昭夫)